霧多布湿原について

1.霧多布湿原の概要
面積は約3,168ヘクタール。東西約3〜4km、南北約9kmの弓形の低湿地帯(海抜3m以下)。北半分には旧砂丘列が平行して南走し、30以上の池沼が帯状に並列する。南半分は5つの川が樹枝状に広がる。湿原の大部分は厚さ0.7〜2.6mのミズゴケの泥炭地で、低層湿原から高層湿原までバラエティーに富んだタイプの湿原が見られる。
- 低層湿原とは
- 植物が水中で堆積を続け浅い池や沼を埋めたもの。無機質土壌の割合が多く富栄養。ヨシ、スゲ類、ハンノキが生育する。
- 高層湿原とは
- さらに植物の堆積が進み、泥炭の発達した状態。土の割合が低く貧栄養。ほとんど栄養を含まない雨水だけでも生育できるミズゴケが主体。さらに虫を栄養源とするモウセンゴケやコタヌキモなどの食虫植物が生育する。
- 中層湿原とは
- これらの中間に位置するタイプで、両者の要素を併せ持つため植物の種類に富む。
2.湿原の成り立ち
-大昔 湿原が生まれた-
湿原の地層を掘ると2~3mの深さに海砂が出てきます。これはおよそ5000年くらい前の層で、エジプトではピラミッドが作られている頃です。霧多布では海面が上がって、今の湿原を海の底に沈めました。その海が次第に引いていくにつれ陸地が出来てくると、低い部分に水が集まり沼や川と共に湿地が生まれてきました。それは2000~3000年くらい前のこと。沼地に生えてきた植物は、低温の為完全に腐りきることなく、半分土になったような状態のまま積み重なって、泥炭と呼ばれる層を作ります。これが年々わずかずつ堆積しながら沼地を埋めていき、湿原が出来上がってきました。霧多布湿原は、ヨシからミズゴケ湿原へと移行する湿原形成の、それぞれの段階を見ることが出来る湿原として、学術的にも貴重な存在といわれています。(1999,伊東俊和「花の湿原霧多布」より)
最近行われた霧多布湿原の地質調査では―
約5000年前の海砂と現在のミズゴケ泥炭層に挟まれた約2m厚の地層を切り出したところ、海砂と火山灰と泥炭とがきれいな層を成していました。この研究により、湿原生成の過程で10回ほどの地震による津波と6回ほどの火山噴火による火山灰を浴びていることが分かりました。切り出された地層標本は現在湿原センターで常設展示されています。
3.湿原の役割
-海と陸と空をつなぐ-
湿原は希少な動植物の生息地となり、湿原で蓄積されたミネラル分は川に運ばれ豊かな海を育てます。また、有害物質を長い時間かけて濾過するフィルターとなり、大量の水を貯めるダムとなり、夏の気温を冬まで蓄えるカイロとなり、さらには大気の温度や湿度まで調整する地球規模の環境調整役となっています。
4.湿原の保全に向けて
-この湿原を未来の子どもたちへ-
この湿原は多くの人を守ってきました。洪水を防ぎ、沿岸の資源を豊かに育て、私達の生活を支えてきました。みんなでこの湿原を守っていきたい。壊すのも人、残すのも人。
ナショナルトラスト運動
霧多布湿原は周囲を道道と林地に囲まれており、そのほとんどが私有地となっているため、霧多布湿原の保護については、この湿原外周の私有地部分を良い状態に保存できるかどうかが、大きな鍵だと言われています。
1986年8月、地元の青年たちによる「霧多布湿原ファンクラブ」が発足。湿原民有地を借り上げるという形での民間による霧多布湿原の保全活動が始まりました(1999年解散)。
2000年には「霧多布湿原ファンクラブ」の活動を引き継ぐNPO法人『霧多布湿原トラスト』が設立され、霧多布湿原のナショナルトラスト運動が始まりました。
保護行政の沿革
- 1922年
- 霧多布湿原中央部の高層湿原部分803.46haが「霧多布湿原泥炭形成植物群落」として、国の天然記念物に指定
- 1955年
- 厚岸道立自然公園に指定(2,850ha)
- 1981年
- 銃猟禁止区域を指定(1,156ha)
- 1992年
- 湿原南側民有地の一部を町が買い上げる(1,378ha)
- 1993年
- 湿原榊町地区の民有地の一部が町に寄付される(12ha)
- 1993年
- 国設鳥獣保護区を指定(2,088ha)
ラムサール条約登録湿地に指定(2,504ha)
これにより、国際的な評価を受けると共にその保全と賢明な利用についての責任も生まれた。
- ラムサール条約とは・・・
- 1971年、イランのラムサールにおいて作成された条約で、正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat)といい、「水鳥をはじめとする野生生物の生息地となっている湿地を、国際的な協力のもとに保護・保全し賢明に利用する(ワイズユース)こと」を目的としている。